日本酒と季節(春・夏)

日本酒の楽しみ方は人それぞれ様々ですが、そのひとつに季節と一緒に楽しむ方法があります。
季節を肌で感じながら日本酒を楽しむのです。日本の伝統的なアルコール飲料である日本酒を、日本の昔から変わらない美しさでもある季節の変化と共に味わう贅沢を感じたいものです。それでは、季節の中で暖かさを感じる春と夏について、その季節の日本酒とその楽しみ方を紹介していきましょう。

<春>
新酒、花見酒、桃花酒、菖蒲酒

「本醸造、純米酒」
仲間と花見でわいわい飲む時におすすめのお酒です。常温で飲むのがおすすめ。

「純米吟醸酒」
おぼろ月夜を見ながらゆっくりと二人で過ごすのにおすすめのお酒です。はまぐりの酒蒸や、菜の花のお浸しと一緒に飲むとグー。

「純米酒」
夫婦でしっぽりとか家庭で晩酌で飲むのにおすすめのお酒です。ほのかに温かくするとなお美味しさが引き立ちます。カツオのなまり節、焼き豆腐、ふきなどと一緒に飲むとよりおいしく飲むことができます。

「にごり酒」
少しあたたかい日に同僚と飲むのにおすすめのお酒。さより、うど、若竹煮などと一緒に飲むとグー。

<夏>
生酒、冷や酒、七夕酒、夏越しの酒

「生酒」、「生貯蔵」、「吟醸酒」、「純米の原酒」
暑い日にキンキンに冷やしたこれらのお酒を飲むのがおすすめです。
ごま豆腐の山葵添えや、おつまみで定番の枝豆、そら豆、焼き茄子などと一緒に味わうと尚良し。また、一手間加えたお酒のお供では、鱧(はも)の梅果肉添えや、鮎の塩焼きなどが美味しいですね。こうした料理は、見た目にも涼しく夏の食欲がおちているときでもするっとお腹の中に入る一品です。

日本酒と季節(秋・冬)

日本は温帯に位置し、豊かな四季に恵まれています。私たち日本人はそうおした四季の移り変わりを目で、そして肌で感じて楽しんできました。そうした四季の楽しみ方に、日本酒とそれに合うおつまみがあれば、よりいっそう季節を感じることができ、また楽しむこともできると思います。

今回はだんだんと肌寒くなってくる季節である秋と、それに合う日本酒、そして食事と、体の冷える冬に最適な温まる日本酒や、それに合うお料理なども同時に紹介していきたいと思います。

<秋>
「食欲の秋」とも言われるほど、秋は魚、野菜、果物など、食べ物がおいしい季節です。食欲が増すと、日本酒の味わい方もそれに合わせて増してきます。

菊酒、冷やおろし、紅葉と酒、月見酒

「吟醸酒」
名月を見ながら飲むのにおすすめのお酒です。きのこ類や、栗、大根などのほかに野菜の天ぷらなどと一緒に食べても美味しいでしょう。また、秋を感じる秋刀魚(さんま)などの魚と一緒に飲むのも最高です。いずれにしても、秋においしい料理と共に味わいたい日本酒です。

「純米酒」
秋も終盤になり、いっそう肌寒くなってきた頃に、人肌かもう少し熱めの熱燗にして飲むとおいしい日本酒です。これも、秋においしい食材と共に飲みたい日本酒ですね。

<冬>
忘年会と酒、めでた酒、雪見酒

「本醸造」、「純米酒」
冬の寒さで冷えた身体を暖めるために、熱燗で飲むのにおすすめのお酒です。

「ふぐのひれ酒」
鱈ちりや、牡蠣の土手鍋などの熱々でおいしいお鍋や、ほくほくのおでん、大根と豚バラ肉の煮込と一緒に飲むのを想像しただけで至福の気分になれるお酒です。

日本酒と温度

日本酒の楽しみ方の一つに、温度を変えることによって楽しむ方法があります。冷やしたり、温めたり、好みはそれぞれです。
その中でお燗をつけて飲む場合、その温度によって表現の仕方が違ってきます。

30℃前後は「日向燗(ひなたかん)」、35℃前後は「人肌燗(ひとはだかん)」、40℃前後は「ぬる燗(ぬるかん)」、45℃前後は「上燗(じょうかん)」、50℃前後は「あつ燗(あつかん)」、55℃以上は「飛びきり燗(とびきりかん)」とそれぞれ名前が付いています。

このお燗の目安は、「香り」と「酸度」です。
「香り」を楽しむお酒の場合、お燗をつけるとお酒の香り自体も損なわれてしまうため、あまり良くないといわれます。それに対して、「酸度」の強いお酒や、コクのあるお酒はお燗をつけても苦味が出にくいのでお燗をつけるのは良いとされます。

次は冷やして日本酒を楽しむ場合ですが、この場合にもその温度によって表現が違ってきます。
5℃は「雪冷え(ゆきひえ)」、10℃は「花冷え(はなひえ)」、15℃は「涼冷え(すずひえ)」という名前がついています。

このように冷やで飲む日本酒は、香りを楽しむものや、さらっとしたタイプの日本酒が向いていると言われます。しかし、香りが高い日本酒の場合、冷やしすぎると香りも一緒に飛んでしまうため、「涼冷え」か「花冷え」あたりが一番美味しいそうです。

しかしながら冷か燗かということについては季節によるところも大きいので、季節に合った日本酒を選ぶのも重要な要素となります。

日本酒の「ひやおろし」と「寒造り」

日本酒の製造方法はイロイロありますが、その製法によって日本酒の味や風味が違ってきます。
今回は日本酒の知識として作り方についてご紹介していきましょう。

<ひやおろし>
真冬、厳しい寒さの季節に仕込まれ、春先に絞られます。さらにその後、じっくりと時間をかけて寝かせられ、秋(外の温度と蔵に貯蔵されているお酒との温度が同じになる)になると出荷されます。

この製法は、出来立てのお酒独特の荒々しさが無くなり、まろやかな口当たりのお酒に仕上がります。このことから、秋に旬のお酒として楽しまれてきたこのお酒は江戸時代から飲まれているそうです。秋に旬を迎える食べ物と一緒に楽しむと抜群です。

<寒造り>
11月頃から翌2月頃までの最も酒造りに適しているといわれている寒い季節に酒造りをすることを言います。
寒い季節が酒造りに適しているのは、寒いことで雑菌の繁殖がおさえられるからだという理由です。この寒造りが盛んに行われるようになったのも「ひやおろし」と同様、江戸時代だそうです。当時は、この寒い時期に造られたお酒を「寒酒」と呼んでいたそうです。

「寒造り」というお酒は一番よい時期に造られた旬のおいしい日本酒だということです。
しかしながら、現在では蔵中の温度を機械によって簡単に調節できるようになってきたため大手の酒造メーカーでは四季醸造(一年中日本酒を造ること)を行うところが多くなっています。

これによって、どの季節でも、同じお酒を同じ味で飲めるようになったのはとても便利なことですが、一方で日本酒好きの人にとっては、日本酒に「旬」というものがなくなってしまい、どこか寂しい部分もあるようです。

吟醸造りと酒造好適米

日本酒をお好きな方ならご存知かもしれませんが、「吟醸造り」についてご紹介しましょう。
吟醸造りとは、読んで字のごとく、吟味して醸造することをいいます。よく精米された白米を低温でゆっくりと発酵させ、カスの割合を高くすることにより、特有の芳香である吟香を発生させる伝統的な製造方法のことを言います。

吟醸酒は、このような伝統的で高度な技術の開発、普及によって完成されてきたものなのです。
このように米を低温でゆっくり発酵させるには、時間と手間がかかるのです。しかし、この手間によってお酒の香りがいっそう引き立ち、香りの高い日本酒が生まれるのです。

そしてまた、その独特の香りは吟醸香と呼ばれ、吟醸酒の味と共に、この吟醸香も日本酒の楽しみのひとつとなっています。
日本酒の「辛さ」というものを楽しむのも良いが、このような香りの良い日本酒で、日本酒の香りを楽しむというのも、もう一つの日本酒の楽しみ方かもしれないですね。

このように日本酒を造る際に使用するのに適したお米のことを「酒造好適米」といいます。
新潟などではあえてコシヒカリなどの普段我々が食べているような上等なお米を使って日本酒を造るようですが、一般的に酒造りで言う「お米」とは、このようなお米とは別物です。

むしろ、我々が普段食べているコシヒカリなどのお米はお酒を造るにはあまり向いていないとされています。

この「酒造好適米」の特徴としては、大粒であり心白(お米の中心にある部分のこと)があることである。また、日本酒を造る際に、お米は小さく削られるため、壊れにくいということが必要となってきます。こうした酒造好適米の代表としては、「山田錦」「五百万石」「美山錦」などの銘柄が有名です。

「三段仕込み」と「初呑切り」

今回は「日本酒」の豆知識を二つご紹介しましょう。

<三段仕込み>
日本酒の造り方にはイロイロありますが、その製法の一つに「三段仕込み」という製法があります。
三段仕込みとは、仕込みの水、麹、蒸し米を「初添え」、「仲添え」、「留添え」の3回に分けて加えていく方法のことです。

今となっては一般的とされている製法ですが、このように仕込みの段階を3回に分けることで雑菌による日本酒の汚染を防止する役割があるとされています。

さらにこの、仕込みの水、麹、蒸し米を加える作業をもう1回増やして4回にした製法が「四段仕込み」と呼ばれており、この製法で造られた日本酒はどちらかと言うと甘口の日本酒になると言われています。

<初呑切り>
「初呑切り」というのは、味を調えるために貯蔵されていた冬の日本酒を検査のために、その日本酒を最初に口にすることです。
「呑切り」とはタンクの呑口を開けることを意味しますので、「初呑切り」とは初めてタンクの呑口を開けることだとなんとなく想像されるでしょう。

この「初呑切り」は蔵元が長い期間一生懸命、愛情をこめて造ってきたお酒の出来を最初に確かめる緊張の一瞬であると同時に、蔵元しか味わうことのできない特別な味を味わうことの出来るもっとも楽しみな瞬間だとも言われます。

長年日本酒を造り続けている杜氏でも、この瞬間だけはいつになっても緊張するようです。じっくりゆっくり、機嫌を伺いながら育ててきた日本酒なだけに、自分の子供の成長を確かめるような心持ちなのかもしれないですね。